ルールとマナー
ただのみきや

早朝の駐車場
誰かが捨てたごみ袋を丁寧に
カラスが広げている
コンビニ弁当の容器や紙クズを
ひび割れたコンクリートの上
器用に嘴を使って


秋晴れの清々しい空の下
目ぼしいものはなにもない
お粗末な食卓を後に
悠々と歩き去る 黒服で 
後ろ手にしたようなその姿
車もないのに信号が変わる


人もカラスも食事をする
人の食べ残しをカラスは食べるが
カラスの食べ残しを人は食べない
カラスにはカラスのルールとマナー
人には人のそれがある
カラスには生まれついて人には後づけの


カラスは自分のそれを守っている
人はしょっちゅう破るルールもマナーも
やたらにあれこれ作っておいて
そのくせ気分と都合で 止むを得ない
今回だけ 誰も見ていない
大したことじゃない とかなんとか


カラスのように気ままに生きたい?
馬鹿げた逃避だ そんな度胸もないくせに
カラスは想わないだろう人間になりたいなんて
きっとこれからも邪魔になれば
カラスなんて殺してしまうだろう何羽でも
奴らだって啄むだろう
人の死体があれば残飯と同じように


――自分本位
カラスには当然のこと
人には(建前上)良くないこと
そんな隣人同士たがいの存在を
末永く当たり前のように
瞳の端で捉えながら
人だけが時折思いやるのだ
自分本位な動機に小綺麗な理由を着せて




            《ルールとマナー:2017年10月21日》









自由詩 ルールとマナー Copyright ただのみきや 2017-10-21 20:01:20
notebook Home 戻る