柘榴の国のお姫さま
そらの珊瑚

朝が来たらしい

いつのまにか雨の調べは遠ざかり

ぼんやりと明るい
そして
うっすらと温かい

光が温かいのは
きっと誰かが決めたこと

光が遠ざかれば また
冷たい闇に抱かれる

そんなことを重ねながら
小さくて丸い私の国は
外へと ふくらみ続けている

だけどそんな繰り返しにも
ちゃんと終わりが用意されていて
それもきっと誰かが決めたこと

光を浴びた粒たちは
球体の中で艶やかな赤色を産む
私を夢心地にさせる
柔らかな寝床

あめ めだか からす すみれ れんげ げんごろう……
通りすがりの幼い声は
ざくろに
たどりつかないまま遠ざかっていった

換羽期の鳥の声が
丸い国境を突き抜けてくる
騒がしいあの者たちは
待ちきれないのだ
早く私を啄みたくて
いずれ私のすべては
透きとおる赤色の粒に同化して
閉じられたこの世界は突然
割れる

強固で脆い
奇妙ないのちのフラジイル

それも誰かが決めたこと

ききみみを立てれば
風がささやく

もう少しそこで眠っておいで
秋がゆっくりとあなたの国を育てあげるまで
 




自由詩 柘榴の国のお姫さま Copyright そらの珊瑚 2017-09-29 13:39:29
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