月光
秋葉竹
いちめんの漆黒の空に
銀色絵の具を 振りかけて
秋 星座 またたく 地上には すすきゆらす風
高校の制服も冬服となり
詰め襟が真面目そうに通学バスから降りる
昼間の手強い強敵のような暑さが
嘘でもあるかのように消えていき
一日を そこそこ懸命には生きたはず
散歩道 軽やかにリズムをとって歩くと
懐かしい夕餉の匂いが
あちこちの家家のシルエットからもれてくる
いままで泣きたいことはあったけど
死なずにはいさせてくれた誰かさん
それを神というなら神さんに
この 星空えがいた透きとおったデッサン力ふくめ
甘ったるい憧憬で手をあわせて感謝する
少しならだまされてあげてもいいよ
このくちびるうばいたいとかはダメだけどね
いちめんのすすき野をわけいって河原に出る
静かな水の流れが
さやさや さやや さやさや、と
うっすら白銀色のささやきを
風に揺れるすすきの穂が
しゃりしゃり しゃりり しゃりしゃり、と
ほのかな黄金色のささやきを
二重奏で奏でてくれている
いままでの均等だった年月
平凡とか異端とか賞賛とか苦悩とか
喜悦とか懊悩とか号泣とか大笑とか
人型としてすり抜けてきただけかと観念していたが
けっしてそうではなかったと今夜答えをもらったよ
いちめんの漆黒の空に
白色絵の具で 円 描く
月 あかり かがやく 地上には すすきゆらす風
試したのは月光
さあ あしたも降りそそげ
自由詩
月光
Copyright
秋葉竹
2017-09-10 21:06:09