過労市
北村 守通

     ブラック企業
     ホワイト街

熟睡することを
否定され
今日も
電源ケーブルが
悲鳴をあげている
熱を出して
膨れあがっている
ツイストペアケーブルが
ねじれてしまって
パニックを起こしている
こと
等々については
誰もが
見て
見ぬふりをしていて

     ブラック企業
     ホワイト街

夜は
昼よりもまぶしく
それでも
飽きることなく
更なる明るさを求め
昼の
漆黒の中
密かに準備は行われている
けれども
針の穴に糸を通すには
やはり
不便な明るさでしかないのだが
おそらく
根源的に
あさっての方向を向いているのだろうが
それを棚に上げて
効率化を叫び
それらについては
誰もが
見て
見ぬふりをしていて

     ブラック企業
     ホワイト街

白い夜
際立つはずの影は
不鮮明で
不完全な明るさ
あさってを照らす
明るさ
背伸びをしすぎて
足がつっているにもかかわらず
座ることを許されない
明るさ
高望みに
つるし上げられ
どこまでで線引きするかを
見失い
あれよ
これよと
悩み
悩むうちに
電源ケーブルは
悲鳴をあげる
汗もかけずに
熱を出して
膨れあがる
ツイストペアケーブルが
混乱する
ねじれる
パニックを起こす
はた迷惑な
眩しさに
瞳の上の遮断機が
自動的に落ちる


  まっくらになる


     ブラック企業
     ホワイト街
     街は
     熟睡することを許されない
     街は
     希望退職することを選択できない
     街には
     福利厚生はない
     街には
     退職金はない
     賞与もない
     街には
     相談すべき相手もなく
    
       当然のこととして
       街には
       加入すべき組合もない


自由詩 過労市 Copyright 北村 守通 2017-08-26 00:47:58
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