小音
木立 悟



ひとつかみ自由に
まわり道またいで
冬の髪ひとふさ
歌うように近づき
消え 現われ 消えつづける


夜のつなぎめ
凍える火から放たれて
ふるえる白
混ざらぬ白
冬山の斜面の
大きな笑みをすぎてゆく


こぼれる滴はひとつなのに
受けとろうとする手は無数にあり
石の通りの光のなかで
まるい音にはねかえる


水の実の音
鈴の実の音
空を見つめる光のまばたき
降りつづき ひらめき
またたく音



おきあがるためのまじないがあり
ひとりへひとりへそそがれてゆく
ひとつで無数の名前が近づき
ずっと一緒にいるとつぶやく



はじまりから分かれて
誰にも受けとられることなく
遠く遠くさまよってきた
小さなひとつひとつがそばに来て
消え 現われ 消えつづける









自由詩 小音 Copyright 木立 悟 2005-03-11 17:15:46
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