真夏を過ぎてゆく悲しみの向こう
りゅうのあくび

たったひとつの巨木が
萌黄の葉を緩やかに
揺らしていたとしても
これらは夏風の断片ですら
あるのかもしれない

たったひとりの少女が
涙の雫を静かに
流していたとしても
これらは希望の水滴ですら
あるのかもしれない

うっとりと
小さな恍惚がして
温もりを思い呼吸を
もとめながら
しっとりと
小さな慟哭がして
哀しみを思い傷跡を
かばいながら

それでも
人間は坂道を登り続ける
悲しい道を辿っていくときでさえ
きっと理由なんてわからないから
それでも
地球は太陽を巡り続ける
悲しい道を辿っていくときでさえ
きっと理由なんてわからないから

遠い夏の日の少女が
きらめく陽差しを避けるようにして
大木の陰を探しては
まるで綺麗な大空に浮かぶ
雲の切れ端をつかむように
とても悲しい風になびく
果てしない季節を
すすけた麦わら帽子で
小さな空としてもすくい取るたび

真夏を過ぎてゆく
悲しみの向こうに
からりと乾いた汗は
優しい匂いがするのかもしれない


自由詩 真夏を過ぎてゆく悲しみの向こう Copyright りゅうのあくび 2017-07-25 20:14:15
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