駅   
前田ふむふむ

              


マダ ツカナイノカ ネー

かぼそい声の
母は 床ずれをした背中を
不自由によこにする
白いベッドのシーツから
石鹸のにおいがする

アア エキニ ツイタ ヨ

母はうすく眼をあけている

うん 降りよう か
また いっしょに あした氷川様に いこう 

ソウダ ネー

子供のように 
皺くちゃに唇をむすんだ
母は
眼を瞑り 寝ているようにみえる

知らないうちに雨が止んでいた

窓から見る空に めずらしく 
いくつもの星が見える
うえのほうで大きく ひかり
そのとなりで小さく ひかる
脈打つ体温のように

あれが ガスや岩でできているというのは
みんな作り話だ

もうすぐ 母は星になるのだ




※氷川様 大宮氷川神社のこと



自由詩 駅    Copyright 前田ふむふむ 2017-06-21 12:14:58
notebook Home 戻る  過去 未来