花ひとつ分の土地
ただのみきや

その美の真中に隠された荒野に
どうか 花ひとつ
植えるだけの土地を譲ってくれませんか

血の滲んだ足を隠して走り続ける旅路のどこか
ほんの一歩か二歩
見守る場所を許してほしいのです


その長く激しい映画の中で
台詞を一つか二つ
端役を与えてください エキストラではなく
ウェイターとかポーターとか
花屋の店員とか 背中でいいんです 
主役の微笑を誘う役なら何だって


これからの人生で
たった一度か 二度
甘酸っぱくなくて構わないから
ああ思い出してくれたなら
ひと息静かにもらす程度 そんな微かな笑みで
風変りな男の真顔で奇妙な告白を


この心はすっかり占領されました
あなたの旗がそこかしこに翻っています 
斯くして恋は伝説に あなたはイコンに

赤々と燃えているあなたの心
その一番荒れ果てた土地の片隅にどうか
花の種ひとつ分の場所を わたしに





          《花ひとつ分の土地:2017年6月14日》






自由詩 花ひとつ分の土地 Copyright ただのみきや 2017-06-14 19:41:43
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