距離
前田ふむふむ


       
凍るような闇に
おおわれている
もう先が見えなくなっている
わたしは手さぐりで
広い歩道にでるが
そこには夜はない

誰もいない路上
灰色の靴音を
ききながら歩くと
その乾いた響きのなかに
はじめて 夜が生まれる

街路灯が
わたしを照らして
影をつくっている
その蹲るようなわたしに
しずかさはない

わたしが影のなかに
街路灯のひかりを見つけたとき
その距離の間に
やがて
しずかさは生まれる

木々にとまる鳥が
眠りにつき
霧でかすみをふかめている
わたしは湿った呼気で
手をあたためる
そして
寒さに耐えるために
強く 公園のブランコにゆれるとき
わたしは ただひとり孤独を
帯びるだけだ

わたしの背に
聳えている街は
脈を打ちながら
いつまでも高々として
わたしを威圧して
夜をつくり
そして
しずかである


自由詩 距離 Copyright 前田ふむふむ 2017-06-07 22:38:38縦
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