青春の記憶(小詩集)
宣井龍人

【人間になれなかった】
人間になれなかった
野原をひたすらつんのめり
海原を懸命に切り裂いた
だが
人間になれなかった
人間はずっと向こうにある
どこを走ったのか
どこを泳いだのか
時間の中を彷徨ったのだろう
だが
人間にはなれなかった

【七頁先の少女】
この身を焼き切るような夏
寒さに震えながら
布団にまるまったとき
七頁先を疑った僕だったけど
一日は確実にひとつずつ捲られ
水に遊ぶ少女の輝きがやってくる
この不思議な実感は何だ
同じ絵が同じ少女が
今生まれたかのように
生き生きと語りかけてくるではないか
七頁先の夏がやってきて
七頁前の冬がただ一枚の絵となった
こんなとき
春夏秋冬の中に僕をみる

【すれちがい】
おかしくはない、なにも
昨日あった、太陽がなくなり
星たちは、地球の下に、落ちてしまった
今日という日が、燃えている
宇宙に、ひろがって
こんにちは、こんにちは
それでも、地球人は
起きて、食べて、働いて、寝て
この世に、住んでいるから、誰も知らない

【心は】
砂時計の下に埋まり時は死んだ
灼熱の仮面と化した頬を伝わる涙
我が命の息吹
伝えられない心の叫び

微笑にこそ愛は宿り
ものに動じぬ心はできる
爪弾くものは何でもよく
流れる愛が欲しかった




自由詩 青春の記憶(小詩集) Copyright 宣井龍人 2017-05-04 12:19:19縦
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