あ・き・ら・め
うめバア

シャッター通りの真ん中で
あたしは夢の中に立っている

正社員だから、収入が増えてと、彼女は言う

そう、よかったねとこたえた私は
それきり何も
言いたくなかったのだけど

有給のことや、ボーナスのこと、「理解ある上司」の話まで聞かされて
うんざりした

ひがんでいるさ、ああもちろん。

正妻だから、とあの人はいう

いやあね、あたしもいろいろあったけど、別れるのはね、大変でしょ
だって、老後のこととか考えるとね

「私さえ我慢すれば」とのけなげな思いが
誰かを押しつぶし、排除し、圧迫し続けること
そしてまた、自身をも圧迫し続けることに
無自覚な人ほど、そう

「ずっと無視されていた」、あの人はそういった
ずっと無視されていたんだと。
家庭から、学校から、歴史から
そして自分も、ずっと無視していたんだと

ああ、話が通じない
でも言っても仕方ないからあきらめよう
そう実感せざるを得ない瞬間の
軽やかな、しかし深い絶望は
やがて私を切り刻み
健康を害するだろう

伝えても、伝えても
すり抜けていってしまう
飾り立てられた言葉だけが空虚に残って
まるで、すっかり終わったキャンペーンのポスターみたいに
風に拭かれてベロベロ揺れる



自由詩 あ・き・ら・め Copyright うめバア 2017-04-27 22:41:10
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