かまぼこ
春日線香

朝から部屋で臥せっていると
唐突に金剛力士がやってきて
口元を引き締めた形相で見下ろしている
それがあまりに突然の出現だったので
なんの心構えも用意もできておらず
ただただ驚愕して畏まるばかり
しかも恐ろしさでは三界に名の知れた
あの金剛が現れたのだから
これは畏まらないほうがおかしいのだ
一体どのような科で責められるのか
あれかこれか、心当たりがありすぎる
あまりにいたたまれない
目を合わせるとどうなることかと
布団を頭まで引き上げて丸まり
わたしは寝床にくっついたかまぼこだ
それでなくともなにか練り物のような
とにかくそんなものだ
だから惨めなかまぼこは無視して
疾く仏界に帰還していただきたい
帰命頂礼、帰命頂礼……
かまぼこ、かまぼこ……
しかしわたしがかまぼこのような
生臭ものであることはまったく確かなことで
金剛としては見逃すはずもなかろう
布団の中で震えていると
結局は金剛杵で素切りにされて
うどんの具にでもされてしまうだろう
つるつると胃の腑に収まって
そこで煩悩を燃やされてしまうことだろう
それならそれでいいかもしれないが……
などと一人相撲は延々と続き
もはやきりもない


自由詩 かまぼこ Copyright 春日線香 2017-04-27 17:14:58
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