くらげ
虹村 凌

缶コーヒーの色を確かめて飲んだ事が無いから
それが透き通っているかと聞かれると自信は無い
匂いはまるで麦茶の様で
そいつがどんな味かもろくに覚えていない

寝る前に見た景色がどんなだったか
写真も撮ってないし絵にも書いてないから
天使達が歌わない時に北から流れ星が降って
僕たちは綺麗な水を探しに行くのかな
きっとなにがどこにあったかも覚えていない

ドッグフードみたいな匂いがする魚の煮付けが
換気扇から泳いで空に昇っていく
鯉たちが大きなくちをあけて飲み込んで
怒ったような色の中に消えていく
桜の花びらたちはまるで
稚魚のように群れて転がって
春を告げる冬の雨の中
目覚めにも似た曖昧な色の中を
転がって
水族館みたいな街を出て
ねぇどこにいくの

背骨の無い言葉たちが漂って
電線に引っかかって
誰も手を伸ばさないから疲れてしまって
声をかけても答えない


自由詩 くらげ Copyright 虹村 凌 2017-04-27 02:24:58
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