綺麗に片方だけ
虹村 凌

湯船の脇にある布団の上で換気扇から聞こえる雨音を数えて眠る
眠たい色の空が笑う
イソジンの後に飲み込むサイダーみたいな色の空だろう
アライグマが桶で手を回す
換気扇の向こうの雨音と解け合っていく粘度の高い水の音
溶けて行く

本棚の足下にあるベッドの上で網戸の向こうから聞こえる雨音を数える
くたびれた色の空が笑う
ラーメンの後に飲み干す冷水みたいな色の空を待っている
痩せた君が唐揚げを作る
キッチンの揚げ物と解け合って行く乾いた水と油の境界線
混ざって行く

その唐揚げは誰の為にあげたんだろうか

風呂場で燃えていく下着達はくるくると換気扇に吸い込まれて
畳まれたタオルの様な色の空に吸い込まれていくのでしょうか
煙は雨粒にぶつかって
それでも上を目指すのでしょうか
煙は傷だらけになってそれでも

からあげの匂いがする服を着て部屋を出た時に
薄ら笑いを浮かべる太陽と目があったので
ゆっくりと老けていくのを感じた


自由詩 綺麗に片方だけ Copyright 虹村 凌 2017-04-26 02:47:10
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