りんごの木の枝に
Lucy





りんごの木の枝に
とまっているのは
葉っぱかそれとも
飛ぶ小鳥

りんごの木の枝に
とまっているように見えるのは
冬の間に吹雪にまかれ
梢近くの枝に刺された
ぼろぼろのポリ袋

りんごの木の枝に
とまっているけど見えないのは
生まれたばかりの
蛾の幼虫
小鳥に啄まれぬように
新芽の根元に隠れてる

りんごの木の枝に
吹き付けるのは
疑い深い春の風
嘘をつくなと怒っては
葉っぱを一枚
裏返す

りんごの木の幹は
実はすっかり虫食いだらけ
祈りを吸い上げ育ってきたが
穴があけられ
中身は刳り貫かれちゃって
ぐらぐらの
すっかすかの骨抜き
それでも立っている
次の嵐が来る頃までは
次の地震が来る頃までは
いいえ次の戦が始まるころには
ひょっとして
誰かのお役に立つかもしれない

りんごの木の枝に
それでも明日も
とまってる
飛べないことりと
歌えない鳥

りんごの木の枝に
それでも明日が
とまってる


自由詩 りんごの木の枝に Copyright Lucy 2017-04-25 20:24:02
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