竹の子の皮をむく
そらの珊瑚

竹の子の皮には
小さな産毛が生えていて
まるで針のよう
はがすごとにちくちくする
皮の巻き方は
妊婦の腹帯のように
みっしりと折り重なっていて
はがされたとたんに
くるりと丸くなる
失われ
やがて転がり
満月の夜
竹林へ還る

そして香る
香水にしたいような
いい匂いではないけれど
懐かしい生き物の匂い


 
初乳を飲んだあとの
まだ眼の明かない赤子の
白い排泄物の匂いに
似ている
かつて
わたしだった透きとおった羊水、まじりの


めくる
めくる
めぐっていけども
うずもれている
肝心のやわらかな本体にはもう永遠に
たどりつけない
無数の春の針が
手に刺さるにまかせ
けれどあともう一枚
竹の子の皮をむく

命のみなもとに再び
巡りあえるような気がして


自由詩 竹の子の皮をむく Copyright そらの珊瑚 2017-04-14 10:26:26
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