いただきます
印あかり

桃をおろし金に擦りつけ
埃をかぶって臭うストローを水で洗った
プラコップの水面は穏やか
遠い南国の、夏の海の、奥の奥

レンジから元気のない食パンを取り出して
固いバターをスプーンで擦り落とす
耳まで白いパンが白いお皿の上に溶けて
遠い雪国の、冬の山の、奥の奥

お腹の中がふやけるくらい
一晩中泣いたあとの朝ごはん

いただきます、から、ごちそうさま、まで
静かな祈りを噛みしめていたら
遠い世界から雲が伸びてきた

母乳のような雨の匂いが
開け放した窓から漂ってきた


自由詩 いただきます Copyright 印あかり 2017-04-04 16:44:33
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