sugaru
木屋 亞万


冬に雪が降るように
春は砂糖が空に舞う
なまあたたかい日差しと
つめたい突風に乗って
粉糖がにわかに吹き上がる
乾いた頬にさらさらと
なめると甘い
空気がもう
糖分で黄ばみ始めて
まだ幸せではないのが
自分だけみたいに
ひっそりと
sugar


砂糖にまみれたときに
避けるべきは水分で
咲ける花々も
週末には焦げついて
街を覆う
人工甘味料も
人体に有害な気がして
しあわせだって
ふこうだって
甘さだって
辛さだって
同じように
人をしに追い込むし
さいごに背中を押すはずの
手が
いくら振り返っても現れない
この先がいいのか悪いのか
頼れるものは何もない


どうせなら
全部かき混ぜてしまえよ
だまにならないように
むらのないように
重いものは下に沈み
混ぜるものにこびりつく
振り回されて
痕跡も残さずに
やられてたまるかと
焼かれる前の幸せの躯から
剥がれてべたべた付着する


4月1日の午前中に死んだ
私の身体を火葬すると
さらさらの上白糖になる
だれも骨壺には入れてくれない
吹くままの風に乗って空を舞う
何だよ結局最後まで
甘ったれたままかよ
なんて
数日のうちに
雨に流れ
排水溝の
奥へと消える



どのはなの
こなも
もれなく
あまいので
あつまり
むさぼり
もてあそび
そのくるしみを
だれひとり
しらない
きづく
どりょくも
しない


自由詩 sugaru Copyright 木屋 亞万 2017-04-02 21:49:02
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