よるのとり
そらの珊瑚

よるになると
ぴい、と音が鳴る
この部屋のどこからか
耳を澄ませる
出どころを
さがしあてようと
眼をつむり
耳だけになってみる
飼ったはずはない
けれどそれは
とりのこえに似ている
逃がしてしまった青いとりのこえに似ている
あのうぐいす笛にも似ている
浅い春
熱海の梅園で買った
竹で出来たその笛を
幼い子が鳴らしている
ぴい、とさえずる
青すぎる青色の空にむかって
思い出になってなお
その笛のは健やかに
病むこともなく
生きて
いる

これからゆくよるの
さみしさのかたわらが
よるのとりの止まり木になる


自由詩 よるのとり Copyright そらの珊瑚 2017-03-24 14:21:11縦
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