舌の記憶
梓ゆい

父の茹でた蕎麦
玉葱と豚こま入りの暖かいつゆに浸せば
いつもより沢山胃袋に流れ込む。
つるつると
眼下を流れる釜無川のように。

父の作った黄色いカレー
ソースをかければ
いつもより滑らかな舌触りになる。
いんげん・鶏肉・人参・ごぼう・カレー粉・小麦粉
昔は蛙の肉を入れて居たんだよ。と
初めて聞く驚きを添えて。

父はもうお家にいないのだが
父の残した鍋と釜は
今日も湯気の狼煙を上げて
おいしい。おいしい。の一言で家の中を暖めている。


自由詩 舌の記憶 Copyright 梓ゆい 2017-02-09 04:24:45
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