月の砂漠
……とある蛙

奇妙な絵だった。

空には赤い月
青いグラディエーションの夜空に星はない。
地平線は白く
大きな駱駝が1頭
太い大きな足は象のようだ。
蹄はなく
指が三本
駱駝の顔は大きい。

近づくと遠近感が微妙に狂ってくる。

顔のでかい駱駝は
ゆっくり歩いているようでありながら
実は人を食らっている。
駱駝の暗い情動と視点が
夜空のグラディエーションに
朱色の帯を入れている。

濁った朱色の帯
砂漠の端に生き残った子供が
胡乱な眼で
夜空を見上げている。

僕はこの絵を見ているうちに
子供と一緒に夜空を見上げていた。
そして、
二人して赤い月に吸い込まれていった。

絵を見ていたはずの僕は
今、裏側から子供と一緒に
自分の部屋を眺めている。
大人になった息子と一緒に
自分の部屋を眺めている。


自由詩 月の砂漠 Copyright ……とある蛙 2017-02-06 15:21:59
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