つながらない電話
梅昆布茶

つながらない電話
部屋の隅のディレクターチェアーで
幾本目かの煙草に火をつける

どの時代の便りがこの暗所に届くかはわからないが
いま結像しているものの光源に想いを致す

混合オイルでしか走れない古い錆びついたモペットで
近所にある新大陸の横断をこころみるも
ちいさな挫折の花火だけが弾けて消える

ことしも大晦日の夜空に幾つもの彗星が彷徨い
ブランクを埋めるためだけに生きてゆく訳 にもゆくまいが
オリオン座のM42を眺めているんだ

荒唐無稽という言い回しが困難な時代に
星の酒場で遺伝子を共有しない兄弟たちと
いつもの彷徨える魂をアテに変哲もない生命論

つながらないけれどすべてから隔離できない
いまを抱えながら登攀路を視認するアルピニスト

グーテンベルクの印刷機にかけてきみの似顔絵を配布する
君のすべての関係性を記載することはできないが
意味のない伝達手段としてはとても素敵だ

自分だけの価値がうみ潰れてやっとのこと印刷できそうなんだが
価値を印刷する機械がめったにないので手描きでおくろうかとおもう

輪郭はわからないが
ただ安く死なないで欲しい
新宿のアングラシネマでデビッドボウイの映画 が
かかっていてシドヴィシャスがモチーフの
sad weekendが上映中だった年末

いつものセブンイレブンで仕事を納めるための
ちいさな買物をするだけなんだが
でもそのあとはあなたが創る世界

締め括りのない日々が日常 だとしたら
どこかで区点をつけて歩き続けるまで

スラップスティックな月が微笑んで
無に色を点じる素敵な時代だもの

言葉では測れないものの
こころみるもこころの奥には

澱んだものがあって良い機会だから
ここで整理するだけなのだ














自由詩 つながらない電話 Copyright 梅昆布茶 2017-01-22 11:39:54
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