こむら返り
田中修子

怖い夢を見て
こむら返りして
いててってなった

ひとりなので足のつま先を
顔のほうへ曲げてくれる人がいない

昨日まで雪の降るまちにいて
彼の仕事の手伝いをしていて
たくさん食器を洗い
きゅきゅっと鳴ってカラリとかわいて
すこしがんばりすぎました

仕事場への道には
もうすぐお仕舞いの冬のばら一輪
赤いのの色が抜けかけて
うすく黄色い
花びらの杯に
ちいさいあられみたいな
雪が溜まっていた

春になったら雪虫は
白いモンシロチョウになって
飛んでゆく

精悍な獣のような若い彼
彼にはきっとこむら返りは
まだ起こらない

灰のように白く笑う
私に命を吹き込んだ
はたちうえの
かんばん屋のことを想う
暖かい漁師のまちの

あのひとはきっといま
年よりの猫といっしょに眠ってる
きっとこむら返りをおこすこともあるでしょう
そうして

ひどくさみしい思いをしているんでしょう


自由詩 こむら返り Copyright 田中修子 2017-01-13 08:31:29
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