冷たい雨
藤原絵理子


誰かが落としたハンカチ
びしょぬれで舗道に張り付く
イルミネーションを飾る 一人の部屋
ひざをかかえて待っている

ポインセチアの鮮やかだった赤は
老人の干からびた腕になった
遠ざかっていく 答えられない質問を残して
過ぎていく時間の密度が薄くなって

煙は雨に打たれて落ちる
思い出は水溶液になって
その土の堆積へ 無機的な形だけが残る

樹になりたいと思った
誰かが何かを伝えようとしている
反響する話し声 意味はない


自由詩 冷たい雨 Copyright 藤原絵理子 2017-01-02 22:22:57
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