ひとりひとり、ひとつひとつ
千波 一也



ひとは
ひとりでに
悲しくなったりしない

ひとりでに
消耗したりもしない

誰かがいるから
誰かがいたから
ひとはその作用をうける

ひとは
ひとりでに
尖ったりしない

ひとりでに
凍えたりもしない

息をあわせて
歩調をあわせて
ほころび合うのが、ひとだ

息をあわせて
歩調をあわせて
いつわり合うのが、ひとだ

その
非力さゆえ
ひとは求める
ひとを求める

たったひとりでは生きられない、と
生きるすべを
生まれながらに
知っているのがわたしたち


いつのまに
ひとは力を得たのだろう
いともたやすく
他を軽んじたり
他を切り捨てたり
そんな
おそろしい力を
いつのまに得たのだろう

ひとは
いつのまに
富める生命に成り果てたのだろう


ひとは
ひとりでに
咲いたりはしない

ひとりでに
包み込んだりもしない

誰かをおもって
誰かがおもって
ひとは時とともに
こころとともに変わりゆく

どうか
明日は晴れますように
あるいは風が起きますように
はたまた雨が降りますように

きっと
誰かの願いが聞こえる一日でありますように
空でつながれますように








自由詩 ひとりひとり、ひとつひとつ Copyright 千波 一也 2016-12-28 23:16:10
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