濁るよりほかに
千波 一也



濁るよりほかに
生き延びようがなかったから
水を欲して、
水を求めて、
ここはさながら渇きの底

濁るよりほかに
明るい方向を知らなかったから
黒を試して、
黒を重ねて、
うつむくことばかり
得意になった

純真な願いほど
傷みやすくて汚れやすい
弱さも、
脆さも、
それ自体には罪などないから
他を巻き添えに
膨らんで、
連鎖して、
忌み嫌われる塊になる
生まれつきにない
罪を分かち合って
塊になる

濁るよりほかに
誤りようがなかったから
わたしは残って、
わずかに残って、
完全に
不完全な
原点のような何かを
失わずにいる
失わずに
すんで
いる







自由詩 濁るよりほかに Copyright 千波 一也 2016-12-23 00:10:36
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