辻褄の合う伝言
りゅうのあくび

ちょうど
想うことと考えることのあいだで
人間がひとしきり
随分と迷うとき
やはり優しさが生まれるのだろう
朝方の出張に備える
昨晩の夜更け過ぎには
ただ愚直に仕事に行く
考えがあるだけで

そう辻褄の合う伝言には
実家から自宅宛に
蜜柑一箱をお歳暮にして
贈る日を伝える理由があった
やはり電話越しにある
母の声に嬉しさを聴いた

四十年も昔に生まれた遠い日が過ぎて
まだ若い母の口癖が耳に残る
僕が迷うときに
掛けていた母の言葉があって
いつも魂を入れて自分で考えなさいと
ふと厳しい音域で
伝えていたことを
感謝とともに想い出す

父が負った借財について
苦情を話していたので
僕は母に言葉を伝えた

あの日には
きっと自由な想いだけがあったよ
分からないことがとても幸せで
すでに分かることが
実はとても大切だとは思う
考えることが行うことでもあり
そこにはいつも迷う必要は生まれはしない
もっと判子を押す前に
僕が厳しく伝えた方が良かった
そう魂を入れて云う
還暦をすでに過ぎた母は黙って
電話を夜空の静寂のなかに置いた
そっと今晩も家族に
料理を作るためだろう

年の瀬に
蜜柑のお礼を
何にしようか考えを
巡らせながら
ちょうど誕生を
祝うために伝言がある


自由詩 辻褄の合う伝言 Copyright りゅうのあくび 2016-12-14 21:10:07
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