入場券
梅昆布茶

ふと思ったのだけれどね
人間には通気孔が必要だってこと

きっとどれかの上着に入ったままの入場券もいつかは必要なんだ
なくてはならないものなんてそんなにないんだけれども

たやすい自由はいつも風に舞う埃
形は変化して止まず言葉はさらさらと滑りおちてゆく

時代の奥行なんて僕にあるわけがない
歴史の重層とかももちろん持ちあわせてはいない
なにものにもなれない夜だけがジャングルを彷徨して

彼女に空っぽだと指摘された僕の失意を
評価されることに疲れてしまった日常を
僕が失効するまえに取り戻さなければならない

逃げる程に追ってくるあるもの
足音と影はいつか僕の襟首を掴まえるだろう

そのまえにその姿をたしかめねばならない

遅すぎることはない
歩を進めるための道にとって

過去を亡き骸にしない現在を
たとえ明日がなくとも
踏みしめてゆく生命でありたい

不完全な事を理由にしない自分を確かめるために
また古い上着のポケットに忘れ去られた入場券をさがす








自由詩 入場券 Copyright 梅昆布茶 2016-12-06 21:16:33
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