焼け凍りアイス
あおば

          161204

アイスクリームの天ぷらを食べたいわ
お父様にねだったら
主夫のおとうさま
ほいきたがってん
しあげをごらんなさいませ
やけにハイの油を天ぷら鍋に入れ
温度は180度に設定
シリコン半導体素子が辛うじて耐えられる温度だし
溶けやすい半田が溶ける温度だ
輻射温度計で正確に温度を保つハイテクの天ぷら鍋
おとうさまはちゃっかり持っている

小麦粉にパン粉と卵をボールに入れかき混ぜる
程良い粘度になってからが勝負だ!
生傷の絶えない蝦蟇の油売りのように大げさに
蝦蟇形のアイスクリームにまんべんとなく垂らし
全身を隈無く包み込む
頃合いを見て転がすように鍋に入れる
猛烈な泡が出るがすぐに衣だけは揚がる
心頭滅却すれば火もまた涼し
内側にへばりついている蝦蟇はインチキな念仏を唱えるが
蝦蟇はあぶらとは仲が良く凍ったままにその姿を保つ
ハイ一丁できあがり
お父さんのはパンダ形のアイスにしよう
白黒の黒はチョコレートを塗ってあるなんて
わざわざ説明する必要もありませんね
できあがったので
可愛い我が子とご相伴
こんな仕合わせだれにも譲れない

お母さんは稼ぐのが上手だから
我が家はお父さんが家事一切を
取り仕切る
台所権を奪い取るのはなかなかたいへんだつたが
今では夫婦仲良く暮らしている
お母さんは次期社長候補との噂も耳にハイるが
ちっとも気にしない


初出「即興ゴルコンダ(仮)」
http://golconda.bbs.fc2.com/
                 タイトルは藤鈴呼さん




自由詩 焼け凍りアイス Copyright あおば 2016-12-04 23:21:14縦
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