曇り空の向こうに
Lucy

 


分厚い雲のはるか向こう
白く明かりを投げてくるのは
まるい太陽

アスファルトに吸い込まれながら
乱れ舞う淡雪
踏みつけようとすると消え
歩こうとすると
視界にまとわりついてくる
眩暈のように
吹雪にまかれ

細く流れる一筋の地下水脈だった
それが支えた
白くまるい夢の明かりを

油断だったのだろうか
それとも覚醒
あるいは風化による
単なる変質

地表に滲み出てきたとき
毒の水だった
井戸の蓋を開け
汲み上げると腐臭がした

そんなはずはない
これは清らかに澄んだ水
泉に石の蓋を被せて
水を封印したオンディーヌ
暴かれることを恐れ
真実は濁りを拒み
誰の目にも映り得ないもの

ただ一杯だけ
もうひとくちだけと
抗いがたい誘惑に
体中が毒に染まる
真実はそんな毒の水

一つの罪を贖おうとして
また違う罪を犯し
罪の上に罪を重ね
守りおおせたしろい夢

大事にあたため隠し持ってきた
秘密をひとつ
井戸の底深く捨てました
誰も知らないから
知られないうちに捨てたのだから
今までと
これからも何も変わらない

だからかみさま
と言いかけて
振り仰ぐ
私の上にゆっくりと
今 石の蓋が閉められる






自由詩 曇り空の向こうに Copyright Lucy 2016-12-04 16:58:35縦
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