misa
千月 話子

  あれから、もう何年経ってしまったのか
  思い出したくないような そんな気持ちで
  今を生きていることを 許してください。
 
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ロマンティックを歌う あの人の暖かい手が
触れる 私の青色のセーター
揺れる心を写した写真に
あなたのオレンジのような南国の笑顔が
対照的に並んでいた
夏の海のような 出会いでしたね。





エメラルド・グリーンのメロンソーダをこぼす程
笑い合った 光り溢れる喫茶店
光景だけが焼き付いて
あれは どこにあったのでしょうか?



柔らかいインド綿のスカートを揺らしながら
クネクネと踊った 私のピンク あなたの青
手首に重なるブレスレットが鈴の音をたてて
あれは どこに消えて行ったのでしょうか?






 それは 1980年代の終わり頃
 とても とても 平穏な
 春の初めの日向を歩くような
 心地良い 日々でした






正座したテーブルの上 可愛いお皿に盛られた
煮込みハンバーグをナイフとフォークで頂いた
高級レストラン仕様の味が 今も忘れられません。
 あの深鍋のデミグラス・ソースには
 不意の客も拒まない 丸い愛を入れて
「ご馳走様。」が 最上級です。



あなたと選んだ 海の指輪は
あなたと共に流れて行った コバルトブルーの波
私の指には 貝殻だけが残されて
金の輪が 月の満ち欠けを真似ているようです。
 夜の箱に入れて 「さよなら」をした日を
 思い出せない・・・・・・・・・・・・。






エイプリル・フールに涙を流した嘘つきの あなた
役者になれば よかったのに。

紫の蝶のくだりが印象的な文章を書いた あなた
作家になれば よかったのに。

大物スターと楽しく喋る あなた
編集者になれば よかったのに。






今 どこに居るのですか?
 私のことを 覚えていますか?
  大好きな あの人の優しい歌を聞きましたか?
   あなたは今 何歳ですか?







青い空の綺麗な晩に 夢を見たの
その中に 映画のワン・シーンのように
エンドロールで笑っていた あなたが
夜の帳と幕を降ろした 美しい物語です。







ある日、どこかで お会いしましょう。
あなたの印を 覚えているのよ。 
  覚えているのよ・・・・。



自由詩 misa Copyright 千月 話子 2005-03-03 17:51:08
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