なまくら
春日線香

包丁がなまってまったく切れず
庭に出て塀でごりごり研いできたところだ
落ち葉や新聞紙で試すとよく切れる
刃先をゆっくりと撫でてみたい気もして
それはぐっとこらえて
あらためて台所に戻ると
まな板の上にもう一本、包丁が置いてある
どうやらそれもなまってしまっているようなので
もう一度庭で研いで台所に戻る
するともう一本、なまった包丁が置いてある
そんなことを何度も繰り返しているうちに
徐々に暗くなっていく台所に
わたしの居場所はない
人を斬り殺しそうな包丁だけが増えていく


自由詩 なまくら Copyright 春日線香 2016-11-17 22:56:09縦
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