落ちない泥
モリマサ公

結局ビリヤードにはいかなかった
じゃんけんはチョキからはじまる

今朝の夢は
このあいだ川に流した軽い子猫の死体を食べる夢だった
きがついたらそのぶちの子猫をかじっており
毛の内側のからだのようなレバーのような部分を
くちから戻す事ができなくて
かみながら飲み込もう飲み込もうとして目が覚めた

地上に落ちる寸前の雪がふたたび浮かび上がる

さりさりと浅い雲のはらが
「朱色の次のまちのあかり」で浮かんでいる
誰かに会いたいような気持ちがしてスニーカーを履く
履いた

「おれたち」や「あたしたち」の体のひとつひとつが
炊き出しのスープをすする
「毎日はきちんとした過去になりつづけるって結構すごいね!」
ってバカか?
アクセルを踏む
迷走する
切断された今は何万キロも生まれつづけ
「すき」「だいすき」「もうダメ」「だよね」
実験的なことをきみたちに伝えつづける
慎重に「タイミングや距離」をはかりながら接するとうまくいく
「ストイックにやらないとうまく行かない事」の方が多い

「目がまばたきしなくなるとき」がかなりヤバい
マジにヤバい時はスタバのドライブスルーとかして「回復」をうながす
しばらく「ヒリヒリした輪郭」になってると
「口がぼわー」となって
そっから「目をとじて」じっとしてると大丈夫っぽくなる
扉をあけて「飛んだり跳ねたり」して「その存在」をたしかめる
グレーゾーン加速しながら進行形
首都高と書かれたゲートをくぐる
窓を10センチあけるとばたばたと風が吹き込んで来る
「ああそっか」またふりだし

でもこれが「わたしという存在」のしかただ
どのブレーキパットも少しずつすり減る

うっそうとしてる記憶の森のなかまたちはみんなそれぞれげんきですか?
この沈黙した画面をみつめている後ろ姿に
伝えるべく事がまだある
きみは手のひらですくう水で風呂桶をみたそうとする
わずかな光だけが手のひらに残る

伸びていく影を踏み抜かないで
遠く有刺鉄線のむこうで背丈のすすきが枯れながら
透明の輪郭でざわざわと揺れている


と云う名のフラットな戦場をはっきりとよこぎる
おれたちジャパニーズをのせた国産車のフロントに
アングロサクソンのこぐ自転車がはじいた小石がぶつかり

風の強い日の木漏れ日と巨大なミラーボールは区別がつかない

明滅するふるぼけた皮膚をばっさりと切り落とす

しみだらけの高架下に
タグられたアルファベットのスペル
乾いたアスファルトの轍にハンドルをとられ
ぼろぼろの形容詞が明朝体でモザイクをかける
カギ穴からカギを抜いてくちびるを噛む
どの光にも噛み砕くたびに
痛みがあること
空には傷跡が
ないということ

カウント
さん
にい
いち





自由詩 落ちない泥 Copyright モリマサ公 2016-11-10 03:00:00
notebook Home 戻る  過去 未来