春は皮下に萌す
はて

ユトリロの白の時代の終焉は
小さな教会を過ぎ
角を曲がれば
景色が変わり
曇りかけた空 薄暗い白壁が
もう見えなくなっただけのこと
かもしれない
道を挟んできょうかいと向き合い
キャンバスを立てる
描き終わった後に選んだ行方は
通り過ぎた
声や匂いに引き摺られたの
かもしれない


冬眠から目覚めると辺りは残雪が多く
所々剥げてむき出しの土もしらけている
正確には枯れている
仰ぎ見る空に
ため息を浮かべると
きらきらと光っている
風邪をひいたのか怠けているのか
鼻はきかず
ぼんやりと
穴を掘るしか
生 ものを 食 ものを探す術はない
春はまだ遠いらしい
もう少し目覚めれば
雪の下の芽も捉えられるはずで


雪野に現れた黒い熊は光を
仰いでいる写真の中で生
きているやせ細りなが 凍
らも奴は確かな嗅覚 える
で春を食らうのだ 地表の
ろう溢れる泉を 雪は光を
見つけるのだ 弾きながら
ろう奴の足 厚みを削られ
元には既 消え失せようと
に繋が しているときには
れた 既に兆し一斉に燃ゆ





まぶたに差し掛かり、視神経の近くと脳の近
くを通りすぎたとき、血液は光というものを
知りました。それからどれだけの時間、どれ
だけの距離、どれだけの岐路を越えたのでし
ょう。ようやく動脈の最後の門に近付いてき
ました。とても暗く、ゆったりと進んでいき
ます。小さな入り口に正確なリズムで吸い込
まれていくのです。それから、また旅に出る
のです。



巡る血は春に触れられず
季節の外殻をなぞるのみ
知ることを知り
くまなく巡った血液でさえ
泉の源にたどり着けず
確かに在り
変化している
春は皮下に萌す



自由詩 春は皮下に萌す Copyright はて 2016-11-05 22:38:12
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