石川和広

笑ってる
イライラしてる
電車にのる
意味なく運命から逃げて京橋を通りすぎ
光が刺して来る
きもちいい
何かが静まり
次の川をわたりながら
女の子の高くいきる声に、おののく
電車の中でなく
人が沢山いなければ
「うちのお母さん、お母さんらしいこと何もせえへん」なんて聞かずに済んだかもしれない
もう大阪に着いたので女の子はいなくなった
一緒に降りたのに離れ離れ
それでいい
久しぶりに実家の方向へ微妙に滑るコンコース大阪駅を歩いて

だ、けども「お母さんらしいこと]なんて一番怖いことだ
愛されないことがあり
愛し合うことでより愛が綻んでいくことがある
水をやりすぎたらくさってしまうみたいに乾くことで、握られるものがある

今あわない
会わないという全ては死なせないためだ

それを憎しみというのか
大阪から京都方面の電車を待つ
もう来る

人殺しの固まりは
三月はじめの風邪を吹き付けて止まる
人が狭い穴から蒸れて歩いてくる

押し込めてくもになって、おからだの不自由な人という椅子に座る
僕は育った町の画廊に絵を見に行くんだな

ねえ、昼下がり諸君は異臭に怯える僕のチックをどう思う?

小さきもの震え
車体傾く

チックにはヒヨコという意味があるそうだよ
ヒヨコは怪鳥の幼い姿で
引き連れるくちばしは固い血管のようにぶすぶすさしこむ

私は口の羽をひきつらすチック!


未詩・独白Copyright 石川和広 2005-03-02 15:30:29
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