金木犀
らいか

黒焦げになってしまいそうになるほどに刺してくる太陽からの熱は段々と弱まって、差してくる光こそチクチク強いものの、半袖シャツが寒く感じてきた頃合いのお話。

その日はそれでも陰のシルエットが強めな日だった。駅前のロータリーは、車もクルクル回ることながら、風通しもいい。

コレから何かバスかタクシーかそれとも電車か。どれかに乗ってどこかへいくのか、今帰ってきて帰る途中なのか、まだ背のの高くない僕は、その女の人に顔から腹にぶつかってしまった。
今考えれば確信犯だったのかもしれない、記憶の中でのその女の人とてもきれいだったからだ。

いい香りだった

香りは

そう金木犀の香りだ、その人は金木犀の人、

「君前見てないと危ないよ、私がヤクザだったらどうするの?」

少し言うべきことがずれているようにも感じるけどこっちが可笑しいのか、今でこそ正論を突く言葉になっていそうだ。

金木犀のその人はそんな野蛮な人たちなんて問題にならないほどの、その、素敵なひとだった。
その素敵な姿はこれから思春期に向けて走りゆく青春の1ページとして美化されいるんだろうか。

だけど
毎年この季節になると香る金木犀の香りに、その人は鮮明に蘇る。
子供の時代というものは二度と戻らないもので、大人の時間感覚の何千カラットも光り輝いていた。
だけどその時間を大事にできるのも今になって、大人の自分にしかできないこと。
そんな時間、気持、光差し込む匂い、分かち合えるそんな金木犀のことを僕は大好きだ。


散文(批評随筆小説等) 金木犀 Copyright らいか 2016-10-05 20:20:41
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