稲刈りの朝に
梓ゆい

今日は稲刈りの朝。

いつもより早く起きた私に
父は焼きたての目玉焼きを差し出した。

「今日もよろしく頼むよ」と
小さな茶碗に白いご飯をよそいながら。

それから約一時間後
トラクターのハンドルを握る父の帽子の上では
赤とんぼが一匹羽を休めている。

二つの大きな目に空が映ると
昨日用水路に落としたビー玉の様にも見えた。

トラクターのエンジン音は
森と林に囲まれた秋晴れの県道に響き渡り
豊作を喜ぶ歌声にも似ている。

今日のうちに終わらせて
明日はみんなで出かけよう。

赤とんぼが行き交う秋の空を頭上に
トラクターは田畑へと続く砂利道を曲がった。





自由詩 稲刈りの朝に Copyright 梓ゆい 2016-09-30 04:19:38
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