あいしているの舟
石瀬琳々

誰も知らない海でした、(けしてあなたのほかには)


舟は出てゆく
夏の入り江、あなたの瞳の奥を


白い鳥は羽根を休めることなく
空にすべる手紙


返事はいらない、ただひとことのさよならを


   *


誰かをおぼえて湖になる、(それがあなただとしても)


舟は出てゆく
秋のさざ波、あなたの吐息の影を


赤い落葉は誰にも知られず
水面にこぼれる告白


口に出していえない、あいしているのすべて






自由詩 あいしているの舟 Copyright 石瀬琳々 2016-09-27 12:34:27
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