台風の夜の音重ね合わせて
田中修子

雨のおとが体に刺さって下に抜けて行く
その先のまちで

男が酒を飲んで煙草を吸い
女が風呂に入り石鹸の香りを嗅ぐ
花は季節に散る

どうということもない
あたたかな食卓が
どれだけになって
成っているか知り

たったひとつだったはずの
歯車が噛み合わず
怒鳴り
泣き
それすらできないで
笑い

台風の夜
ぽたぽた
とたとた
ざんらざんら
ととととと
ぽんぽん

軽やかに秒が去る
水滴のようにね
その先、その先
そして秋が来る


自由詩 台風の夜の音重ね合わせて Copyright 田中修子 2016-09-23 22:57:49縦
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