鳩の家
そらの珊瑚

屋根一杯に
鳩がいる
何かの見間違いかと
車窓から目を凝らす

もしや瓦の形の鳩じゃないか、と

でもやっぱりそれは鳩だった
生きている鳩そのものだった

ねえ、あれ鳩ですよね
誰かに訴えようにも
みなスマートフォンの画面に
視線を落としたままだ
例えば世界の終わりがやってこようとも
うつむいたままなんですか
(笑)を語尾につけたから
世界は僕に優しいなんてまやかしなのに

それにしても周りの家々の屋根には
一羽たりともいないのは
どうしてなのだろう
鳩が
あの家だけを好く理由がわからない
やっぱり私は人間なのかな

鳩は飛び立つこともせず
狭い屋根の中をうろついている
あんなに鳩に居つかれちゃったら
さぞや住人は迷惑してるだろう
鳩は数羽ぐらいがちょうどいいもの
日曜日の朝
とぼけた鳴き声で
起こされるのは嫌いじゃない

それとも
もはやあの家に
人間などいなくて(要らなくて)
鳩に乗っ取られた家なのかもしれない

あの家の中に
産み落とされた
無数の鳩の有精卵
熱帯夜によって
孵化したヒナで今や
身動きとれない
窒息しそうなほどの羽毛が舞い躍る
楽しい楽しい鳩の家





自由詩 鳩の家 Copyright そらの珊瑚 2016-09-15 20:55:29
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