芋月仲間が秋夜に揺れる音
あおば

        160915

流す日記を書き終わり
一気にカーテンを開くと
そこには母の顔
月が出ているよ!
あなたの大好きな

あなたは2100年になると
109歳
賢くて可愛いアンドロイドの女の子
凜々しい男の子が交代で介護してくれる

今夜は15夜
勝ち組の家のカーテンからは
ドビッシーのピアノの調べ♪
シューベルトも負けないぞ!
黒鍵を連打する、連打する

負け組の僕たちは
見晴らしの良い河原に腰掛け
互いに生芋を囓りながら
月面就業試験に受かる見込みの無い
僕たちは
ネイティブの日本語しか使えない
自動翻訳器ではあなたのかわいさが
うまく伝わらないのさ
いざというときの意思疎通にも支障があるから
5カ国語くらいは身につけていないとね
月での仕事は駄目だとさ

日本語を絶やすなの掛け声で、
ときたま日本語教室は開かれるけど
かぐや姫のお話などを教えるものだから
だれも本気になってくれないのさ

今でも現代詩を書いている僕たちは、
いまでは何語で書けばよいのか分からずに
仕方なく身に染みついている日本語だから
読んでくれるお金持ちの読者もいないから
紙に鉛筆で書いて風船に結びつけ夜空に飛ばすんだ
上空2万メートルくらいまでは揚ってくれる
風船が限界まで膨らんでパチンと割れて
その後はゆっくりと落ちてゆく
ジェット気流に乗り込み
地球の何処かに届くんだ
そこがどこであれ、君のバルコニーである可能性も
少しはあるだろうと本気で考える
月見る夢の月呼さま♪




以下を読んで書きました
「洗礼ダイアリー」文月悠光、ポプラ社





初出「即興ゴルコンダ(仮)」
http://golconda.bbs.fc2.com/
タイトルは、藤鈴呼さん



自由詩 芋月仲間が秋夜に揺れる音 Copyright あおば 2016-09-15 10:29:43縦
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