コモドアーズ
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 かつて、コモドアーズ、というソウルミュージックのバンドがあった。その存在を知ったとき、ぼくは、こもだなおき、を思い出した。こもだなおき、は、ぼくの幼馴染。家が近所で、同じ幼稚園に通っていた。
 こもだなおき、には、お父さんやお母さんのほかに、一緒に住むお婆ちゃんがいた。そのお婆ちゃんは、たいそう厳しい。その頃のぼくは、えらくやんちゃで、例えば、ママが、用事で遠出する際、近所に、ぼくを預かってくれる家は、こもだなおき、の家を除いてなかった。当時のぼくは、近所で有名な、きかんぼう、で、あの子は、危なすぎる、ということになっていた。
 きかんぼうのぼくは、こもだなおき、の家に預けられて、お婆ちゃんに怒られても、平気で暴れた。こもだなおきを、馬乗りになっていじめた。お婆ちゃんは、いくら怒っても暴れるぼくの両手を後ろ手に縛り、門の脇の、駐車場の柱に括り付けた。夕方 になって、ぼくを迎えに来たママは、柱に括り付けられているぼくを見て、たいそう怒った。お婆ちゃんに
「うちの子に、何をするんですか!」
 と怒鳴った。お婆ちゃんも、怒鳴り返した。
「この子は、うちの窓の障子を全部破いたんだよ!」
「だからって、縛ることは、ないじゃないですか!」
「この子には、いくら言って聞かせても無駄だから、こうするほかなかったんだよ!」
 こもだなおき、の家からの帰り道、ぼくの手を引いたママは、泣いていた。とても、悔しそうだった。ぼくも、なんだか、悔しいような気がして、泣いた。
 それも、つかの間、ぼくは、相変わらずのいたずら小僧で、近所のお寺の池で、インスタントラーメンをふやかして食べたり、お寺で飼ってる犬に、グロンサン(当時の強壮剤)を飲ませて、和尚さんから、罰当たりな子供だ、と怒られたりしていた。

 石神井公園に、まだ、カブトムシやクワガタがいた頃の話である。


散文(批評随筆小説等) コモドアーズ Copyright MOJO 2016-09-10 18:29:22縦
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