天然
Lucy

自販機で水を買う
百円の小ぶりのペットボトル
冷房の効いた車輌を待ちながら
冷たい水を飲む
汗が額から頬へ伝い
顎で雫となって
滴る
あたたかい風が吹き抜ける
ホームの日陰で
私は息を吹き返す

ペットボトルに
「天然水」と書いてある
ラベルには高山の写真
深い谷川を流れ下る澄んだ水
上流に湧き出る泉
あるいは雪解け水を連想させる
(浄水場で大量の塩素に浄化された
使用済みの水ではなく・・)

天然からもう遥かに離れた暮らしの中で
「天然」という言葉が放つ
特別の光

天然ボケの私も
光れるだろうか

冷たい水が
一瞬正気に戻してくれたら
天然の言葉が
私の頭上に
夕立のように降るかしら






自由詩 天然 Copyright Lucy 2016-09-01 12:16:32縦
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