四季
梅昆布茶

失われた時を還せ
死んだ夢を呼び覚ませ
きみのうなじの産毛が好きだから
僕の名前を風に聞いてくれ

最期の銅鑼が鳴り僕たちのバンドは退いてゆく
黄昏の中へ精緻な夜へと官能をつなぎとめる
もう歌詞のない実体のない試験管のなかの闇を
夏の終わりの暗闇を歩こうぜ

僕は妄想が上手になったし
きみともまだ続いている
苺のような唇をウオッカで満たし
艶やかなキスを僕にくれないか

波留 菜津 亜紀 不輸
きみが産まれたとき僕はそこにいた
ビバルディなんて百年まえのぽんこつだが
きみの四季を僕は聴いている

僕の品行方正はとうに失われて
髪も随分うすくなって愛から遠く
もう孵化のテスト不合格で
だんだん正直になってゆく馬鹿者にすぎないのだが

新宿南口のバスターミナルからの夜行バスでいつか
きみに逢いに行くからそれまで待ってくれないか
僕は一時でも詩人かロッカーになりたかった
いまだに誘惑するきみの唇に逢いに行く

いまこのときもきみのメイド姿のゆめを
これからも僕のちいさな債務の愛を
保ち続けようとおもっている



自由詩 四季 Copyright 梅昆布茶 2016-08-26 20:12:20
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