夕立
北村 守通

音がする
夕立の
音がする
慌てふためく
声が聞こえる
慌てふためく
足音が
雨の音にかき消される

無人の道に
雨が叩きつける
地上にたまっていた
堆積物を弾いて
空中にまきあげる
忘れてしまっていたものたちの匂いに
はっとさせられる
忘れてきてしまっていたことを
思い出さされる

  気がつけば

雨の音は
いつしかやわらかく
雨の音に
いつしか聴き入っている
蝉の声も
いつしか戻っている
人の足音も
いつしか戻っている
やがて
人の声も戻ってくる
雨の後姿が
小さくなっていく

西の空は
まだ白く
西の空は
あと一息だけ
まだ白く
西の空が
黄色く
赤く
青く
変わっていくのは
まだ
もう少し先のことなのだろう
けれども
白の後姿も
ゆっくりと
小さくなっているはずなのである


自由詩 夕立 Copyright 北村 守通 2016-08-14 00:39:56縦
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