(なべ)
「ま」の字
ふゆ
まっ白い雲のうかぶ空は
あおじろい怒りの気配
をたたえ そ
の
下を
煮えきらず
あるいていた
手に
侃々とたぎり
鳴る鍋は なく
白い白い
雲は浮かぶのが
「自由」と
ペンキで殴り 描かれ
た ように
かぜでそぎ立ち
おれは
烹烙する/にえたぎる
うつわの中味を気にしたがる
たがる
身を
花よ
菜の花よ
おさえ おさえ
おれは
三十年間同じ値で吊された値札なのだ それなのに
黄ばみ垂れ
三十年間同じ値で吊されたこの値札
(の)
きもちもわからないか
このおとこ!
まっしろい
くも
うかぶ きもちが
吊るされた
かんかんかん、な!
ひとも じんせいも
胆
(
はら
)
か 呪いの
けふはもう 風邪のこじゃらせ
かかえるほどな 具もないのに
おおきくおおきく
かかえやがる この
乞食野郎、頭陀のあしと腹
がすすむ
冬は過ぎ 春咲き乱れ
侃々と
鍋のおとが耳元で
わめきちらし
自由詩
(なべ)
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「ま」の字
2016-08-10 23:05:52縦