想像という病
木屋 亞万

実際の風景よりもiPhoneで撮った画像の方がきれい

目の前の君よりもTwitterで数行ずつ切り取られた君の内面の方が好き

お肉をもぐもぐ食べる時より今夜の店のレビューを見てる時の方がおいしい

写真や絵や文章であらわされているものが
頭の中に掻き立てるもののほうが
とても魅力的に思えてしまう病のようなものに
十代の頃から
いやもっと前から蝕まれているのかもしれない
綻びや、とりとめのなさや、漠然とし過ぎている現実の
のんべんだらりとした具体物の集積よりも
ポリゴンみたいな断片的で抽象的なものを、
都合のいい想像でつなぎ合わせていく方が、幸せ

そうして
撮れたて写真より加工されたものの方が
周りの人間よりも遠くの映画の方が
新鮮な魚より缶詰の方が
よくなってしまって
生のものから
一次的なものから
鮮度の高い物から
遠ざかってしまって
周りの体験のすべての鮮度が落ちていく
当事者性が消えていく
そういう病に蝕まれている

しかし至って幸せである



毎日死にたいと思う以外は


自由詩 想像という病 Copyright 木屋 亞万 2016-07-17 11:58:09
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