続・日曜は父親と遊園地に行こう
モリマサ公

昼夜を問わず
駄目
絶対
な薬物を一度は深く愛した人が消費している間
自動販売機はなにも教えてくれなかったし
コンビニはなんにも知らなかった
いつもの橋をわたる未来に於ける渦
時折光る川面のはじで自転車が沈んでいるのがうっすらみえてる
新品ののみものをあたし選んで白い袋にぶら下げて
歩いてる間強盗にも通り魔にもあわなかった
平和な時代一度は深く愛した人だった
駄目
絶対
を繰り返し消費して
空中を我々の喜怒哀楽が帯状に通過している
我々はそのどこかに所属しながら時に汗を流した
前髪を短く切りすぎて深く愛した人はバカにした
知らない窓からはピアノがとぎれとぎれ聞こえ
知らない女の子とアート作品を作ると言って彼は消えた
コンビニの白い袋は宇宙で一番信用出来るものだった
子供はまだ赤ん坊で無邪気なはずで
とてつもない苦しみが今後何年にもわたって
あたしや彼女を蝕むなんて夢にもおもわなかった
彼が
あたしを近い未来殴り
倒れてしまった体の腹の部分をゴミを蹴るようにして
何度も何度も蹴り飛ばすことも
駄目
絶対
近い未来台所からあたしが包丁をもちだして
彼を刺そうとしてそのあとの記憶がなくなり
次の日刃物が全部家からなくなることも
たくさんのテロが成功した地上の片隅で
あたしはネグレクトに手を出し
おたふくをひいたちいさな赤ん坊に
なぜ生まれてきたのか罵倒したり
殺しそうになりながら病院までつれてゆく
病院は人間だらけで人間にみえるあたしを少しまともにうけいれてくれた
赤ん坊は泣きも笑いもしなくなった
駄目
絶対
わたしは事の次第を親友に電話し
それを聞いた親友があわてて
いくつもの電車を乗り継ぎむかえにきた
この家をでるようにいう
あたしは何度も立ち止まり家をふりかえる
幸福だったのだ
幸福だった
駄目
絶対
我々はすでに過去になればなるほど不幸になってくのが信じられなかった
ラストシーンはどこにも無かった
迎えにきた母親の車にのせられつくばにいった
高速道路が何色でできているのかあたしにはわからなかった
母親の住んでいたのはちいさなアパートだった
広大な畑の片隅で
赤ん坊はしゃべりもしなければ
泣きもしなかった
ちいさなアパートであたしは
警察からの電話をうける
彼が捕まったと言う過去が鼓膜にダメージと安息をあたえた
駄目
絶対
を消費しながら
もどってこなかったという過去を探っているそばを
未来は駈け抜けていった
よくいえば現在という空間のなかで
コンビニの白い袋が
車にひかれ空中に舞い上がりまたひかれるを
くりかえす
文字になって定着していく
コンビニ袋のよれが
自分の分身のようで
あの日我々は
幸福だったのだ
幸福だった



あれから10年

イースターエッグは沈黙しつづけ
赤ん坊はチック症の少女になった
地上ではいくつかのテロが成功し
大きな災害がおとづれ
たくさんの命が奪われた

我々はまだ生きのびてた
そうして物語は
あらかじめ用意されていた過去になろうとしていた
文字になって定着していたフィクションが
書籍や電子書籍のなかから飛び出し温度をともなって
ノンフィクションになろうと意気込んでいる
朝日がリビングのカーテンの裏側で光りはじめる
ミュートされたテレビのアナウンサーの口が動いている
ぼろぼろに破壊しつくされた瓦礫の上を
センチメートルで情報にする人工衛星は無自覚で
青いビニールシートが上空をおおう


世界の中心でハロー
こどもたち
君たちの覚えていられない思い出をいっぱい作ろう
良い絵本をたくさん読み
母の料理を食べ
日曜は父親と遊園地に行こう
金ならいくらでも出す


駄目
絶対


地上の片隅でハロー
おれたちの覚えていられないくらい思い出をたくさん作ろう
あたしたちは良い本をたくさん読み
母は料理ができなくてコンビニ飯ばかり
日曜は
駄目
絶対でつかまっていた
理論的にはきみの父親が
遊園地でひまそうにしてるところを
想像しよう
金は

一銭も

ない





   


自由詩 続・日曜は父親と遊園地に行こう Copyright モリマサ公 2016-07-11 18:23:23
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