制服
はるな



まぶしい半袖たちがはしっていくので
道が喜んで反射をする
かつてわたしも制服をきていたが
この道はくすんだように黙っていた

もうしばらく前のことになるので
よく覚えていない
駅前にあったパン屋の名前(オレンジ色の、プラスチックのトング)
雨の日のぎゅうぎゅう混みのバス(おもたく湿ったウールの匂い!)
やわらかく馴染んだローファーの踵を踏む甘やかさ、
「指定外」のくつ下を履いていると没収された、
校舎が一体何階建てだったか(二階の踊り場には倉庫があって)
誰が誰を好きだとか(始終めまぐるしく入れ替わる)
だからもう、
裏庭の沈丁花が白かったことも
自分の帽子だけが最後までみつからなかったことも
3階の端の教室にだけベランダがついていることも
そこから身を乗り出すと すこしだけ海がみえたことも
ぜんぶ忘れてしまった



自由詩 制服 Copyright はるな 2016-07-08 23:58:04
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