ぼくのきらいなキミ
モリマサ公

ぼくのきらいなキミの中に映像や声がたくさんはいってくる瞬間にたちあいたい
そんなキミをとりまいている勝手なワイファイに一緒にざけんじゃねーぞと叫び
そのときおとずれる眠気や無気力や無遠慮な刺激とかを味わいたい
おもわずわきでた涙や情熱を一緒にやりすごしたい
ぼくのきらいなキミの人生が楽ではなかった事を知っていますとか
ぼくのきらいなキミの身にこんなにつらいことがおこらなければよかったと思いますとか
本当は何も知らないくせにすごく愛してるみたいにふるまって傷つけたい
キミの最低な部分をすごくスキになる瞬間はゆったりとおとずれる
知ってる
ぼくのきらいなキミは死んでいくカナブンを何日もみとどけながらベランダでタバコを吸って
今も死んだカナブンをみつめタバコを吸いながらベランダに座っている
ベランダからみえる星の数を毎日ひとり背中をまるめ数えている
ぼくのきらいなキミは無印のビーズクッションに埋もれて
くりかえしひとにだまされたりうらぎられたりして
ころしてやりたいとすら思う日々をおくり
もしも病気ならたくさんの錠剤をのみながら
こどもや母親とともになりゆきのままに生きている
本当はうらやましい気持ちがいりまじる
キミをすきになればなるほどにぼくたちは体温を失って何も感じなくなっていく
ぼくのきらいなキミに風景としてよりそいながら余生を過ごしたくてみる夢のなかで
キミは口からどんどん生きた子猫を何匹も何匹も吐き出して
生きた暖かい子猫を噛みちぎらないように歯を立てないようにしている
子猫たちは屋上からどんどん下の茂みに吸い込まれていく
ぼくのきらいなキミが柔らかい生きた子猫を吐き出す
吐き出すたびに
キミをますますきらいになりながら
自分を肯定できないぼくの癖は
キミをきらいになればなるほどにおぼろげながら浄化されていく
キミをきらいになればなるほどにおぼろげながらぼくは浄化されて
キミをますますきらいになりながら浄化されて
キミの最低な部分を
すごく
好きになる
瞬間は
ゆったりと
おとずれて
しまう


 


自由詩 ぼくのきらいなキミ Copyright モリマサ公 2016-07-05 02:03:19
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